「ホームページはあるが、院長の考えや診療の流れが伝わっていない」「SNSに何を投稿すればよいか分からない」。クリニックの集患を考えるとき、発信する題材に悩むことはないでしょうか。
そのヒントの一つが、患者さんから寄せられる疑問に、医師が答えるインタビュー形式です。特別な演出よりも、受診前に知りたいことを分かりやすく説明することから始められます。
本記事では、クリニックが質問形式の動画を制作し、ホームページやSNSで活用する進め方を整理します。制作手順や測定方法は、Alplanからの実務上の提案です。
集患動画の目的は、受診前の判断に役立つ情報を届けること
動画を作る際は、「再生数を増やす」の一歩手前で、誰のどんな疑問を解消するかを決めます。
例えば、初めて受診を検討する方には、診察の進み方や持ち物が役立つかもしれません。一方、すでに通院している方が知りたい内容は異なります。対象を広げすぎず、一つの質問に一つの回答を用意すると、内容を整理しやすくなります。
院長の自己紹介も、経歴を長く説明するだけでなく、「診察で説明する際に大切にしていること」など、患者さんに関係する話題から考えます。実際の診療で行っていることを、確認できる範囲で伝えましょう。
動画の視聴だけで個別の診断や治療方針が決まるような構成にはしません。一般的な説明と、診察で判断する内容を区別することも必要です。
最初の題材は、院内で繰り返し聞かれる質問から選ぶ
撮影機材を選ぶ前に、受付・看護師・医師で「よく聞かれる質問」を持ち寄ってみましょう。
質問を集める際は、患者さんを特定できるエピソードや診療情報を、制作会社や外部ツールにそのまま共有しないようにします。個別の事情を取り除き、一般的な質問の形に整理します。
次の表は企画を考えるための例です。医学的な回答内容や受診の緊急性は、担当医師が確認します。
| 質問の種類 | 企画の例 | 視聴後に確認してもらう情報 |
|---|---|---|
| 初診の流れ | 初めての診察では、どのように話を聞きますか | 初診案内・持ち物 |
| 検査の説明 | 検査を行うかどうかは、何を確認して決めますか | 診療案内 |
| 診療への姿勢 | 患者さんへ説明するとき、大切にしていることは何ですか | 医師紹介 |
| 予約の方法 | 初診と再診で予約方法は違いますか | 予約案内 |
| 通院時の準備 | 他院の検査結果や薬の情報は持参した方がよいですか | 来院前の案内 |
すでにホームページで十分に説明できている質問なら、新しい動画を作るより、既存ページを見つけやすくする方が適している場合もあります。動画は、必要な情報を届ける手段の一つとして選びます。
院長インタビューを制作する5ステップ
① 一つの動画で答える質問を決める
最初からシリーズ全体を作り込まず、試作する質問を一つ選びます。
選ぶ基準は、患者さんにとっての分かりやすさと、院内での説明の必要性です。検索されそうな言葉だけを先に決めると、自院の診療と合わない題材になりかねません。
質問の言い方も確認します。「当院の強みは?」という聞き方より、「初診ではどのような流れで診察しますか」の方が、具体的な説明を引き出しやすくなります。
② 回答の要点を短いメモにする
台本は全文を暗記するためではなく、伝える順番をそろえるために用意します。
構成例は、「質問への回答」「補足や条件」「次に確認できる院内情報」です。専門用語を使う場合は、患者さんに伝わる言い換えを添えます。
一般的な説明でも、条件を省くと誤解を招くことがあります。短くすることを優先しすぎず、残すべき説明を医師が判断します。
③ 音声と映り込みを確認して撮影する
初回は、院内の静かな場所で試作する方法もあります。映像の装飾より、声が聞き取れるか、話している内容が理解できるかを確認します。
背景に患者さん、電子カルテの画面、書類、氏名の表示などが映らない場所を選びます。撮影場所や時間を事前に決めておくと、診療への影響も抑えやすくなります。
外部へ制作を依頼する場合は、撮影、編集、字幕、修正、公開作業のどこまでを含むか確認します。動画の利用先やデータの保管・削除についてもすり合わせておきましょう。
④ 医師が編集後の動画と字幕を確認する
撮影時の発言が適切でも、切り取りや字幕の省略で意味が変わることがあります。
例えば、条件付きの説明から条件だけが削られていないか、字幕で医学用語や数字が誤っていないかを確認します。生成AIを文字起こしや編集補助に使う場合も、公開する内容は人が確認します。
確認対象には、動画本編だけでなく、タイトル、サムネイル、概要欄、短く切り出したSNS版も含めます。誰が最終承認するかを、制作前に決めておくと進行しやすくなります。
⑤ 動画から関連する院内ページへ案内する
動画を見た方が、次に何を確認すればよいか分かるようにします。
初診の説明なら初診案内へ、診療内容の説明なら該当する診療案内へつなぎます。どの動画からも同じトップページへ案内するのではなく、話題に合うページを選びます。
診療案内ページの構成については、関連記事「クリニックの集患につながる診療案内ページの作り方」で整理しています。動画で伝える内容と、ページで詳しく説明する内容を補完させましょう。
一度の収録を、HP・SNSでどう活用するか
動画を公開した後は、内容に合う形でホームページやSNSへ展開します。
ホームページでは、該当する案内ページに動画と要点を掲載する方法があります。動画を見られない方にも内容が伝わるよう、文章で確認できる情報を用意します。
SNSでは、一つの質問を紹介し、回答のある動画や記事へ案内する方法が考えられます。長い動画を短くする場合は、条件や注意点が欠けていないかを改めて確認します。
文章や短い動画へ展開するたびに、個別の確認作業が必要です。最初からすべての媒体へ出そうとせず、院内で確認を続けられる範囲から始めるとよいでしょう。
公開前に、医療広告としての確認も行う
厚生労働省は、医療広告に関するガイドラインや、SNS・動画を含む事例解説書を公開しています。[1][2] 医師が話す形式や「情報提供」という名称だけで、広告規制の確認が不要になるとは考えないようにしましょう。
確認したいのは、治療効果を保証するような表現、他院より優れていると誤認させる表現、治療内容や効果についての患者さんの主観的な体験談などです。
自由診療を扱う場合は、治療内容、標準的な費用、主なリスク・副作用など、必要な情報の示し方も確認します。[2] 短い動画だからといって必要な説明を省き、別ページへのリンクだけで済ませられるとは限りません。
個別の表現の判断に迷う場合は、最新の公式資料と、所管自治体の医療広告相談窓口などで確認します。これらは公開前に確認したい主な観点であり、全要件を網羅したものではありません。
再生数だけでなく、記事・予約案内への動きを測る
成果を振り返る際は、公開日と確認する日を記録し、同じ経過日数で比較します。例えば公開24時間後と7日後など、無理なく続けられる時点を決めます。
確認する指標は、次のように目的別に選びます。
- 見られたか:表示回数、再生数、視聴時間や視聴維持に関する指標
- 関心が続いたか:保存、共有、関連ページへのリンククリック
- 受診前の確認につながったか:初診案内や予約案内へのアクセス、予約フォームへの移動
予約ページへの移動と予約完了、実際の来院は別の段階です。計測できる範囲を明示し、動画の公開後に予約が増えたというだけで、すべてを動画の効果とは判断しません。
SNSから自院の記事へ案内する際は、計測用パラメータなどを使い、流入経路を識別する方法もあります。件数が少ない段階では率だけで評価せず、実際のクリック件数と合わせて確認します。
最初の一本は、患者さんの質問から始める
クリニックの動画発信は、大がかりな撮影や毎日の投稿から始める必要はありません。
院内でよく聞かれる質問を一つ選び、医師が説明し、内容を確認して公開する。その後、どこまで見られ、必要な案内へ進んでもらえたかを振り返る。この流れを回せるかを、まず確かめましょう。
Alplanは、クリニックの集患に向けた記事・SNSの企画、ホームページの案内改善、運用の整理を支援します。「何を発信すればよいか」「動画や記事を予約案内へどうつなげるか」という段階からご相談ください。
代表・幸城裕樹の登壇動画(YouTube/メディカルトリビューン)
参考情報
[1] 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
[2] 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(令和8年3月)
https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
出典確認日:2026年10月20日。制度・資料の内容は変更される場合があります。
