医療安全の体制づくりは、病院だけの課題ではありません。医療法施行規則では、診療所を含む医療機関の管理者に対して、医療に係る安全管理のための体制を確保することが求められています。[1]
開業準備では、内装や機器、採用などに目が向きがちですが、医療安全の仕組みも開業時から整えておくことが大切です。この記事では、クリニックが整えておきたい医療安全体制の基本を整理します。
1.医療安全管理体制として求められること
医療法施行規則第1条の11では、医療機関の管理者が確保すべき安全管理の体制が定められています。診療所に関わる主な内容は次のとおりです。[1][2]
- 医療に係る安全管理のための指針の整備
- 職員研修の実施:定期的(年2回程度)および必要に応じて実施することが求められています
- 事故報告等による改善のための方策:院内で起きた事故やヒヤリ・ハットを報告し、改善につなげる仕組み
- 院内感染対策、医薬品の安全管理、医療機器の安全管理のための体制の確保
なお、医療安全管理委員会の開催については、入院施設のない診療所には適用されない規定とされています。[2]
具体的に何をどこまで整える必要があるかは、診療内容や施設の形態によって異なります。開設前に、管轄の保健所に確認しておきましょう。開設後の立入検査で確認される項目もあります。
2.医療安全管理の指針に書く内容
指針は、院内の医療安全に関する基本的な考え方とルールをまとめたものです。一般的には、次のような内容を盛り込みます。
- 医療安全管理に関する基本的な考え方
- 院内の体制(責任者、報告の流れ)
- 職員研修に関する基本方針
- 事故やヒヤリ・ハットの報告と改善の方法
- 医療事故が発生した場合の対応
- 患者からの相談への対応
- 指針の閲覧に関すること
自治体や関係団体が公表している例を参考にしながら、自院の規模や診療内容に合わせて作成します。作成して終わりではなく、実際の運用に合わせて見直すことが大切です。
3.研修は「実施した記録」を残す
職員研修は、医療安全の基本や院内のルールを全員で共有する機会です。開業時はスタッフ全員が新しい環境で働き始めるため、院内の手順や報告ルールを伝える場として特に重要です。
研修を実施したら、日時、内容、参加者を記録しておきます。外部の研修や動画教材を活用する場合も、記録を残しておきましょう。
4.報告しやすい仕組みが改善につながる
事故やヒヤリ・ハットの報告は、件数が多いことが悪いわけではありません。報告が上がることで、事故につながる前に手順を見直すことができます。
- 報告様式は、短時間で記入できる簡単なものにする
- 報告した人を責めないことを、院長から明確に伝える
- 報告された内容を定期的に振り返り、改善策を全員で共有する
小規模なクリニックでは、院長が報告を受ける立場になることが多いため、院長自身の姿勢が報告のしやすさを左右します。
5.医療事故が起きた場合の対応も決めておく
医療に起因する予期しない死亡・死産が発生した場合は、医療事故調査制度に基づく報告と院内調査が必要になります。この制度は診療所も対象です。万が一の際に慌てないよう、指針の中で対応の流れと相談先を確認しておきましょう。
開業時に「仕組み」として整える
医療安全の体制は、開業後に整えようとすると、日々の診療に追われて後回しになりがちです。開業準備の段階で、指針、研修、報告ルールをセットで用意しておくことをおすすめします。
Alplanでは、クリニックの開業支援として、開業準備の工程整理や院内マニュアル・業務フローの整備に関するご相談を受け付けています。医療安全に関する手順をどう整えればよいか迷っている方は、お気軽にご相談ください。
参考情報
確認日:2026年10月12日。求められる体制の詳細は、法令の原文と管轄の保健所の案内をご確認ください。
[1] e-Gov法令検索「医療法施行規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100050
[2] 千葉市「医療安全管理体制について」
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/iryoeisei/hokenjo/somu/iryou_anzen.html
