2015年10月に始まった医療事故調査制度は、開始から10年を迎えました。日本医療安全調査機構が2026年3月に公表した2025年の年報によると、2025年の医療事故発生報告は375件で、前年の349件から増えています。[1]
医療事故調査制度は、病院だけでなく診療所も対象です。この記事では、年報の主なデータを紹介するとともに、クリニックの院長が制度について押さえておきたい点を整理します。
1.医療事故調査制度とは
医療事故調査制度は、医療に起因する(または起因すると疑われる)死亡・死産のうち、管理者がその死亡・死産を予期しなかったものを対象とする制度です。対象となる事案が発生した場合、医療機関の管理者は、医療事故調査・支援センター(日本医療安全調査機構)に報告し、院内で調査を行い、その結果をセンターに報告します。[1]
この制度の目的は、責任の追及ではなく、原因を分析して再発を防止することにあります。
2.2025年年報の主なデータ
2025年の年報で示された主なデータは次のとおりです。[1][2]
- 医療事故発生報告件数:2025年は375件(前年は349件)
- 制度開始からの累計:2015年10月から2025年12月までで3,633件
- 院内調査結果報告:2025年は360件
院内調査結果報告を「起因した医療(疑いを含む)」の分類で見ると、「手術(分娩を含む)」が158件と最も多く、「処置」が39件、「医療機器の使用」が28件と続いています。[2]
手術を行う医療機関に報告が多い傾向はありますが、処置や医療機器の使用など、外来診療でも関わりのある分類も含まれています。
3.クリニックが押さえておきたい3つのポイント
診療所も制度の対象になる
医療事故調査制度は、病院だけでなく診療所や助産所も対象です。規模の小さな医療機関でも、対象となる事案が発生した場合には報告と院内調査が必要になります。
「予期しなかった死亡」かどうかの判断
対象となるかどうかは、管理者が判断します。判断の前提として、事前に患者や家族へ説明していた内容や、診療録への記録が重要になります。日頃から、リスクの説明と記録を丁寧に行っておくことが大切です。
相談できる窓口がある
対象となるかの判断に迷う場合や、院内調査の進め方が分からない場合は、医療事故調査・支援センターに相談できます。また、地域の医師会などが支援団体として院内調査を支援する仕組みもあります。小規模な診療所で単独で調査を行うことが難しい場合でも、支援を受けながら対応できます。
4.平時から準備しておきたいこと
医療事故は起きないことが一番ですが、万が一に備えて、平時から次の点を準備しておきましょう。
- 医療安全管理の指針に、医療事故発生時の対応手順を明記しておく
- 院長が不在の場合も含め、連絡と判断の流れを決めておく
- 説明と同意、診療の経過を診療録に適切に記録する
- 支援団体や相談窓口の連絡先を確認しておく
データを「自院の備え」につなげる
医療事故の報告件数は、制度の周知とともに推移しています。データを見るときは件数の増減だけでなく、どのような医療行為で報告が多いのか、自院の診療内容と重なる部分はどこかを確認することが大切です。
Alplanでは、クリニックの運営体制づくりや業務の見直しに関するご相談を受け付けています。医療安全に関する手順書の整備や、院内の連絡・報告ルールの見直しを検討している方は、お気軽にご相談ください。
参考情報
確認日:2026年10月12日。数値は各資料の公表時点のものです。最新の情報は公表元でご確認ください。
[1] 日本医療安全調査機構「2025年 年報」(2026年3月)
https://www.medsafe.or.jp/survey/past-report/2025
[2] ケアネット「2025年の医療事故発生報告、手術で多いのは/日本医療安全調査機構」
https://www.carenet.com/news/general/carenet/62646
