医療事故やヒヤリ・ハットを防ぐには、「どのような場面で起きやすいのか」を知ることが出発点になります。日本医療機能評価機構が運営する医療事故情報収集等事業では、全国の医療機関から報告された医療事故の情報を集計・分析し、公表しています。
この記事では、同事業の2025年のデータを紹介し、クリニックの院内対策にどう生かせるかを整理します。
1.医療事故情報収集等事業とは
医療事故情報収集等事業は、医療機関から医療事故やヒヤリ・ハットの事例を収集し、分析結果を医療現場に提供することで、医療安全の向上を図る事業です。大学病院などの報告義務対象医療機関と、任意で参加する医療機関から報告が寄せられています。
日本医療安全調査機構が運営する医療事故調査制度(死亡・死産事例が対象)とは別の仕組みで、死亡に至らない事例も含めて幅広く情報を集めている点が特徴です。
2.2025年の報告件数
2025年1月から12月に報告された医療事故情報は6,118件でした。内訳は、報告義務対象医療機関から5,409件、任意で参加する医療機関から709件です。2025年末時点の参加医療機関数は5,538施設でした。[1]
3.事故はどのような場面で起きているか
2025年1〜3月の報告(報告義務対象医療機関の1,256件)を「事故の概要」で分類すると、次のようになっています。[2]
| 事故の概要 | 割合 |
|---|---|
| 治療・処置 | 34.1% |
| 療養上の世話 | 30.7% |
| 薬剤 | 7.5% |
| ドレーン・チューブ | 6.9% |
| 検査 | 5.3% |
| 医療機器等 | 3.6% |
| その他 | 11.7% |
報告義務対象医療機関は主に大規模な病院のため、入院患者に関わる「療養上の世話」(転倒・転落など)の割合が高くなっています。
4.クリニックの院内対策にどう生かすか
報告の中心は病院ですが、外来中心のクリニックでも共通する場面は少なくありません。特に確認しておきたいのは次の3つです。
薬剤
処方や院内での投薬では、患者の取り違え、薬剤名や用量の確認漏れ、アレルギー情報の見落としなどが起こり得ます。確認の手順を決め、誰がどの段階で確認するのかを明確にしておきましょう。
検査
検体の取り違えや、検査結果の確認漏れ・連絡漏れも注意が必要です。外部の検査機関に委託する場合は、結果が届いたときに誰が確認し、どのように患者に伝えるかを決めておくことが大切です。
転倒・転落
外来でも、待合室やトイレ、診察台の昇り降り、検査後の移動などで転倒が起こり得ます。院内の動線や段差、手すりの位置などを点検しておきましょう。
5.ヒヤリ・ハットを共有する仕組みをつくる
事故の多くは、その前段階としてヒヤリ・ハットが起きています。小さな「ヒヤリ」を責めずに共有できる仕組みがあれば、重大な事故を防ぐきっかけになります。
- 報告しやすい簡単な様式を用意する
- 報告した人を責めないルールを院内で共有する
- 定期的に事例を振り返り、手順の改善につなげる
日本医療機能評価機構のWebサイトでは、報告された事例やその分析が公開されています。自院の診療内容に近い事例を院内研修の題材にするのも一つの方法です。
データを手順の見直しにつなげる
全国の事故データは、自院でまだ起きていない事故を知る手がかりになります。データを参考に、自院の業務の流れの中で確認が抜けやすい場面を点検してみてください。
Alplanでは、クリニックの業務の流れの見直しやマニュアル整備に関するご相談を受け付けています。確認手順や報告ルールを整えたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
参考情報
確認日:2026年10月12日。数値は各資料の公表時点のものです。最新の情報は公表元でご確認ください。
[1] 日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業 報告書」
https://www.med-safe.jp/contents/report/index.html
[2] 日本医療機能評価機構「医療事故情報収集等事業 集計表(2025年 第1四半期)」
https://www.med-safe.jp/contents/report/html/shihannki/2025/1Q/index.html
