患者からの苦情や相談は、クリニックにとって負担に感じられるものです。しかし、初期対応を誤ると、小さな不満が大きな不信感に変わり、紛争に発展することもあります。
全国の都道府県や保健所設置市などには、患者や家族からの医療に関する相談を受け付ける「医療安全支援センター」が設置されています。この記事では、センターに寄せられる相談のデータを紹介し、クリニックでの初期対応のポイントを整理します。
1.医療安全支援センターとは
医療安全支援センターは、医療法に基づいて都道府県、保健所設置市、特別区などが設置している相談窓口です。患者や家族からの医療に関する苦情・相談に対応し、必要に応じて医療機関に情報を提供するなどの役割を担っています。
医療機関にとっては、患者が自院に直接伝えなかった不満が、センターを通じて寄せられることもあります。
2.全国で10万件を超える相談
厚生労働科学研究の報告書によると、令和6年度に実施された医療安全支援センターの運営状況調査では、全国で118,562件の相談が集計されています。[1]
自治体ごとの報告を見ると、寄せられる内容は「相談」と「苦情」に分かれています。例えば千葉県船橋市では、令和6年度に882件を受け付け、その内訳は相談が55.1%、苦情が44.9%でした。[2]
集計の方法や区分は自治体によって異なるため、ほかの地域にそのまま当てはまるわけではありません。ただ、寄せられる声のうち一定の割合が「苦情」であることが分かります。
3.苦情が紛争に発展しやすいパターン
患者の不満が大きくなる背景には、医療行為そのものよりも、コミュニケーションの問題があることが少なくありません。
- 説明が不十分で、治療の内容や見通しが理解できなかった
- 質問しにくい雰囲気があった
- 待ち時間や対応について、理由の説明がなかった
- 不満を伝えたときに、取り合ってもらえなかった
4.クリニックでの初期対応のポイント
まず話を聞く
患者の訴えを途中で遮らず、まず最後まで聞きます。事実関係の確認は、話を聞き終えてから行います。
事実と感情を分けて受け止める
不快な思いをさせたことへのお詫びと、事実関係についての説明は分けて考えます。事実関係が確認できていない段階で、医療行為の誤りを認めるような発言は避け、「確認して改めてご連絡します」と伝えます。
院長への報告ルールを決めておく
受付スタッフが最初に対応することも多いため、「どのような内容なら院長に報告するか」「その場で院長が対応するか」をあらかじめ決めておきます。
対応の内容を記録する
いつ、誰が、どのような訴えを受け、どう対応したかを記録しておきます。記録は、その後の対応や院内での振り返りに役立ちます。
5.苦情を「改善のきっかけ」にする
苦情の中には、院内の手順や説明の仕方を見直すヒントが含まれています。寄せられた声を定期的に振り返り、案内の掲示や説明資料の改善、予約や受付の流れの見直しにつなげましょう。
初期対応のルールを院内で共有する
苦情への対応は、担当者の経験に頼りがちです。対応の基本と報告ルールを院内で共有しておくことで、スタッフも落ち着いて対応できるようになります。
Alplanでは、クリニックの事務長支援や業務フローの見直しに関するご相談を受け付けています。患者対応のルールづくりや、院長とスタッフの役割分担を整えたい方は、お気軽にご相談ください。
参考情報
確認日:2026年10月12日。数値は各資料の公表時点のものです。最新の情報は公表元でご確認ください。
[1] 厚生労働科学研究成果データベース「分担研究報告書(医療安全支援センターの相談内容の分類に関する研究)」
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202421001A-buntan3.pdf
[2] 船橋市「医療安全推進協議会 資料(令和6年度 医療安全相談の状況)」
https://www.city.funabashi.lg.jp/shisei/jouhoukoukai/004/02/0116/p150043_d/fil/houkoku1.pdf
