医療機関の経営環境を語るとき、「倒産」が注目されがちです。しかし、実際に市場から退出する医療機関の多くは、倒産ではなく「休廃業・解散」によるものです。
帝国データバンクの調査では、2025年に休業・廃業・解散が判明した医療機関は823件で、過去最多を更新しました。このうち診療所は661件を占めています。[1] この記事では、休廃業・解散の現状と、その背景にある院長の高齢化について整理します。
1.休廃業・解散は倒産の10倍以上
2025年の医療機関の倒産は66件でしたが、休廃業・解散は823件と、倒産の10倍以上にのぼります。[1]
休廃業・解散の内訳は次のとおりです。[1]
- 病院:15件
- 診療所:661件
- 歯科医院:147件
休廃業・解散は、倒産と違い、資金が尽きる前に事業を自ら閉じるケースが多く含まれます。経営が成り立っていても、診療を続ける人がいないために閉院するケースもあります。
2.背景にある院長の高齢化
厚生労働省の「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、診療所に従事する医師の平均年齢は60.1歳で、年齢階級では「60〜69歳」が最も多くなっています。[2]
帝国データバンクの調査でも、物価高や賃上げによる経営悪化とともに、経営者の高齢化が休廃業・解散の背景として挙げられています。[1]
多くの診療所は院長が経営者であり、同時に主な診療の担い手でもあります。院長が高齢になり、引退や体調の変化を迎えたとき、後継者がいなければ閉院を選ばざるを得ません。
3.閉院の影響は地域にも及ぶ
診療所の閉院は、その医療機関だけの問題ではありません。
- 通院していた患者は、新たな医療機関を探す必要がある
- スタッフは職場を失う
- 地域によっては、身近な医療機関が減ることになる
特に、かかりつけ医として長く地域を支えてきた診療所の閉院は、患者にとって大きな負担になります。
4.院長が早めに考えておきたいこと
引退や承継は、まだ先のことと思っていても、準備には時間がかかります。次のような点を、早めに整理しておくことをおすすめします。
- 何歳頃まで診療を続けたいか
- 親族に後継者の候補はいるか
- 第三者への承継(譲渡)を検討するか
- 閉院する場合、患者やスタッフへの案内をどう進めるか
- 医療法人の場合、出資持分や役員の扱いをどうするか
承継の選択肢については、別の記事で詳しく紹介しています。
「続けるか、閉じるか」を早めに考える
診療所の休廃業・解散の増加は、院長の高齢化と後継者不足という構造的な課題を映しています。経営が順調なうちに将来の選択肢を整理しておくことが、患者やスタッフ、地域を守ることにもつながります。
Alplanでは、クリニックの経営に関するご相談を受け付けています。将来の承継や体制づくりについて、何から考えればよいか整理したい方は、お気軽にご相談ください。税務や法務に関わる判断は、税理士や弁護士などの専門家と連携して進めることをおすすめします。
参考情報
確認日:2026年10月12日。件数は事業者単位の集計です。最新の情報は公表元でご確認ください。
[1] 帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」(2026年1月)
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/
[2] 厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/24
