2025年に休業・廃業・解散が判明した診療所は661件にのぼり、医療機関全体では過去最多を更新しました。[1] 背景には、院長の高齢化と後継者不足があります。
「いずれ引退するとき、クリニックをどうするか」は、多くの院長にとって避けて通れないテーマです。この記事では、クリニックの将来を考える際の主な選択肢と、それぞれの特徴、早めに準備しておきたいことを整理します。
1.主な選択肢は3つ
院長が引退を考えるとき、主な選択肢は次の3つです。
親族承継
子どもなど、親族の医師に診療所を引き継ぐ方法です。
第三者承継
親族以外の医師や医療法人に、診療所を引き継ぐ方法です。院内で勤務している医師に引き継ぐ場合や、外部の医師に譲渡する場合があります。
閉院
後継者がいない場合や、承継を選ばない場合に、診療所を閉じる方法です。
2.それぞれの特徴
| 選択肢 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 親族承継 | 診療方針や患者との関係を引き継ぎやすい | 後継者の意向や専門分野が合うかの確認が必要 |
| 第三者承継 | 親族に後継者がいなくても、診療を続けられる | 相手探しや条件調整に時間がかかることがある |
| 閉院 | 院長の意思で時期や進め方を決められる | 患者の転院先の案内やスタッフへの対応が必要 |
第三者承継は、親族や院内に後継者がいなくても診療を続けられ、患者が引き続き医療を受けられる点が大きな利点です。一方で、承継先とのマッチングに時間がかかることや、経営方針の変化によってスタッフや患者が離れることもあるため、引継ぎの進め方を丁寧に検討する必要があります。
3.個人立と医療法人で手続きが異なる
承継の進め方は、診療所が個人立か医療法人かによって大きく異なります。
個人立の診療所
個人の診療所は、開設者が院長個人であるため、承継する場合は新たな開設者として手続きをやり直す必要があります。診療所の開設届や保険医療機関の指定申請なども、改めて行うことになります。
医療法人の診療所
医療法人の場合は、理事長などの役員の交代や、出資持分の扱いが主な論点になります。出資持分のある医療法人では、相続や贈与に伴う税負担が課題になることがあり、出資持分のない医療法人への移行を支援する「認定医療法人制度」もあります。制度の要件や期限は、厚生労働省の最新の案内で確認してください。
いずれの場合も、税務・法務の専門的な判断が必要になるため、税理士や弁護士などの専門家と相談しながら進めます。
4.早めに準備しておきたいこと
承継には、相手探しから手続き、患者やスタッフへの案内まで、時間がかかります。引退を考える時期の数年前から、次の点を整理しておくと選択肢が広がります。
- 引退を考えている時期の目安
- 親族に後継者の候補がいるか、その意向
- 診療所の財務状況(収支、借入、資産)
- 建物や医療機器の状態と、今後の更新予定
- 患者数や診療内容など、承継先に伝える情報
- スタッフの雇用をどうするか
5.閉院する場合も「計画的に」
閉院を選ぶ場合も、患者への案内、カルテの保存、スタッフの雇用、賃貸借契約やリース契約の整理、各種の届出など、必要な対応は多岐にわたります。急な閉院は患者やスタッフへの影響が大きいため、計画的に進めることが大切です。
将来の選択肢を「早めに」整理する
事業承継は、引退が近づいてから考え始めると、選べる選択肢が限られてしまいます。経営が安定しているうちに、自院にとって望ましい将来の姿を考えておくことをおすすめします。
Alplanでは、クリニックの経営や将来の体制づくりに関するご相談を受け付けています。「何から考えればよいか分からない」という段階でも、現状の整理からお手伝いします。税務・法務の判断は、税理士や弁護士などの専門家と連携して進めることをおすすめします。
参考情報
確認日:2026年10月12日。制度の要件や手続きは、公表元や管轄の窓口でご確認ください。
[1] 帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」(2026年1月)
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/
