東京商工リサーチの調査によると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の医療機関の倒産は71件で、前年度から20.3%増えました。業態別では、クリニック(診療所)が32件、歯科医院が31件で、いずれも過去20年で最多となっています。[1]
倒産の原因で最も多いのは「販売不振」の47件(66.1%)でしたが、2番目に多いのは「既往のシワ寄せ」の16件(22.5%)で、その他の原因は合わせて8件でした。[1] この記事では、「既往のシワ寄せ」とは何か、そしてクリニックの資金繰りで注意したい落とし穴を整理します。
1.「既往のシワ寄せ」とは
「既往のシワ寄せ」とは、過去の業績不振や赤字の積み重ね、過大な借入などが解消されないまま残り、それが経営を圧迫して倒産に至ることを指します。
つまり、倒産の直前に急に問題が起きたのではなく、以前から抱えていた問題が少しずつ積み重なった結果だということです。「販売不振」と合わせると、倒産の約9割が、収入の減少や過去の業績不振に関わる原因となっています。[1]
2.クリニックの資金繰りで起こりやすい落とし穴
入金と支払いの時間差
保険診療の診療報酬は、診療してから入金されるまでに時間差があります。一方で、人件費や賃料などの支払いは毎月発生します。開業当初や患者数が減った時期には、この時間差が資金繰りを圧迫します。
借入の返済が続く
開業時や設備投資時の借入の返済は、患者数が減っても毎月続きます。返済額が収入に比べて大きいと、少しの収入の減少でも資金が不足しやすくなります。
費用の増加に気づきにくい
人件費、材料費、光熱費、システム利用料などの費用は、少しずつ増えていきます。一つ一つの増加は小さくても、積み重なると利益を圧迫します。
赤字を借入で埋め続ける
一時的な資金不足を借入で補うこと自体は問題ではありませんが、赤字の原因が解決しないまま借入を重ねると、返済の負担が増えて「既往のシワ寄せ」につながります。
3.資金繰りを見える化する
資金繰りの問題に早く気づくには、損益だけでなく、お金の出入りを月ごとに確認することが大切です。
- 今後数か月の入金予定と支払予定を並べる
- 手元資金が何か月分の支出をまかなえるかを確認する
- 借入の返済予定と残高を一覧にする
- 前年同月と比べて、収入と費用がどう変化しているかを見る
4.早めに手を打つために
資金繰りが厳しくなってから対策を考えると、取れる選択肢は限られてしまいます。変化に気づいた段階で、次のような対応を検討しましょう。
- 患者数が減っている原因を確認し、集患の見直しを行う
- 契約やサービスの内容を見直し、不要な費用を減らす
- 設備投資の時期や内容を再検討する
- 金融機関や税理士に早めに相談する
小さな変化を放置しない
倒産の原因の多くは、ある日突然起きたものではなく、時間をかけて積み重なったものです。資金繰りの小さな変化に早く気づき、早めに手を打つことが、クリニックの経営を守ることにつながります。
Alplanでは、クリニックの開業支援や経営改善に関するご相談を受け付けています。資金繰りや収支の見通しに不安がある方は、現状の整理からお手伝いします。融資や税務の判断は、金融機関や税理士とも連携して進めることをおすすめします。
参考情報
確認日:2026年10月12日。数値は公表時点のものです。最新の情報は公表元でご確認ください。
[1] 東京商工リサーチ「TSRデータインサイト(2025年度 医療機関の倒産動向)」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202783_1527.html
