情報確認日:2026年10月27日
「HPで見た料金と、来院後の見積もりが違う」「施術後に相談できると思っていたのに、連絡先が分からない」。美容医療では、医院が伝えたつもりの内容と、患者さんが理解した内容との間に、行き違いが生じることがあります。
HP担当者、受付、カウンセラー、医師、会計担当者が、それぞれ自分の範囲を説明していても、患者さんにとっては一つの受診体験です。場面が変わるたびに条件が変わって見えると、不安や不信感につながりかねません。
本記事では、厚生労働省の注意喚起を入口に、HPから施術後の相談まで、説明のつながりを点検する方法を整理します。新しい集患施策を増やす前に、現在の案内を一つの施術メニューで確かめてみましょう。
1.公的資料が注意を促していること
厚生労働省の「その美容医療、ちょっと待って!」は、料金の食い違い、施術内容やリスクの説明不足、不適切なカウンセリング、強引な勧誘、アフターケアに関するトラブルなどを紹介しています。[1]
同サイトは2026年3月12日に動画コンテンツを追加しています。これは資料の更新日であり、本記事が2026年10月に新しい調査結果が発表されたことを伝えるものではありません。
また、厚労省の医療広告に関する事例解説書第6版では、自由診療について通常必要となる治療内容・費用、主なリスク・副作用等の情報提供を扱っています。[2] HPに何をどう表示するかは、広告の種類や内容に応じた確認が必要です。
以下の表、質問例、点検手順は、これらの資料を踏まえたAlplanによる実務上の提案です。個別の施術の適否や、広告・契約の適法性を判定するものではありません。
2.まず一つのメニューで、患者さんと同じ順番に確認する
院内の書類を一度にすべて見直そうとすると、どこから始めるか迷いがちです。まずは問い合わせの多い施術を一つ選び、患者さんが接する順に資料を並べます。
HPやSNSの案内、予約完了メール、来院時の説明資料、見積書、同意書、会計明細、施術後の案内を用意しましょう。電話や口頭でしか伝えていない内容も書き出します。
| 場面 | 患者さんが確かめたいこと | 医院側で照合する資料 |
|---|---|---|
| HP・予約前 | 何を受けられ、いくらかかるか | 施術ページ、料金表、予約案内 |
| 来院・診察 | 自分に適しているか、ほかの選択肢はあるか | 診察時の説明資料、見積書 |
| 同意・契約 | 何を選び、どの条件で申し込むか | 同意書、契約書、費用の内訳 |
| 会計 | 説明された金額と請求が合っているか | 確定した見積書、会計明細 |
| 施術後 | 気になることを誰に相談するか | 注意事項、連絡先、再診の案内 |
担当者同士では意味が通じても、初めて読む患者さんには分からない表現があります。「通常料金」「処置料込み」「術後対応あり」などの言葉は、何を含むかまで説明できるかを確認します。
3.料金は、掲載価格と実際の支払いをつなぐ
最初に確認したいのは、HPの料金を見た患者さんが、来院後の見積もりを理解できるかです。価格が変わる条件がある場合は、その条件を来院前の案内と見積もりで照合します。
例えば、同じ施術名でも、対象範囲、回数、使用する薬剤や機器、麻酔の有無などによって内容が異なることがあります。自院で採用している条件を整理し、料金表の名称と見積書の名称を対応させましょう。
以下は、院内で確認する項目の例です。すべての医院で同じ費用が発生するという意味ではありません。
- 診察、検査、麻酔、薬などのうち、別料金になるものは何か。
- 選択できるオプションと、選んだ施術に必要となる項目を分けて説明しているか。
- 料金の対象範囲、回数、有効期間などの条件が資料間で一致しているか。
- 分割払いを案内する場合、月々の額に加えて支払総額や手数料等を確認できるか。
- 変更・中止時の費用について、誰がどの資料を用いて説明するか。
見積もりが変わったときは、確定前のものと確定後のものを区別します。旧見積書が会計に渡ると、担当者は資料どおりに処理していても行き違いが起こり得ます。変更理由、説明担当者、確定した版が分かるようにしましょう。
会計担当者が差額に気づいたときも、その場で医学的な理由を推測して説明する必要はありません。「内訳を確認してご説明します」といった確認の流れを用意し、必要な担当者へ戻します。
4.診察と事務説明の担当範囲を分ける
説明を統一することは、全員が同じ質問に同じように答えることではありません。医学的な判断が必要な質問と、予約・支払い等の事務的な質問では、確認先が異なります。
厚労省の2025年8月15日付通知は、無資格のカウンセラー等が患者さんの個別の状況に応じて治療方法を選択・提案・決定するなど、医学的な判断を行い伝えることについて注意を示しています。[3] 料金説明という形でも、実質的に医学的判断をしているかが問題となる点に留意が必要です。
院内では、受付やカウンセラーから医師に戻す質問例を決めます。「自分の肌でも受けられるか」「別の施術の方がよいか」「この症状は問題ないか」などを、事務担当者が独自に判断しない運用にします。
一方、説明のたびに患者さんが同じ希望を最初から話し直す状態も避けたいところです。患者さんが希望する内容、まだ迷っている点、医師に確認したい質問を、必要な担当者へ引き継ぎましょう。記録は役割に応じた範囲で共有し、患者情報を一般の業務メモへ不用意に転記しないようにします。
5.効果への期待と、施術後の生活を具体的に確認する
料金の確認と並行して、患者さんがどのような結果や過ごし方を想定しているかを確認します。「十分に説明しましたか」だけでは、どこが伝わっていないかをつかみにくいためです。
医師の説明後には、例えば次のように、残っている疑問を聞く方法があります。
- 「期待していることについて、まだ確認しておきたい点はありますか」
- 「施術後のお仕事やご予定との関係で、心配なことはありますか」
- 「ご自宅で気になる状態が出たときの連絡先は、こちらの案内で分かりますか」
これらは会話のための例であり、定型質問に答えてもらえば医学的な説明や同意確認が完了するという意味ではありません。施術ごとの効果、リスク、経過の説明は、個別の診察と適切な資料に基づいて行います。
HPで印象的な言葉を使い、診察では慎重な説明をするだけでは、最初に形成された期待が残ることも考えられます。診療側が説明している内容とHPの表現を照合し、更新が必要な箇所を医師と制作担当者で確認しましょう。
6.その日に決めない場合の案内も用意する
患者さんが「持ち帰って考えたい」と話したときの対応も、説明体制の一部です。迷っている理由を確認することと、その場で契約を迫ることを混同しないようにします。
院内では、見積書の有効期間、再相談の方法、予約を入れ直す手順を整理しておくと、担当者による案内の差を減らせます。キャンペーン条件がある場合も、内容と期限を正確に説明し、患者さんが検討できる形で情報を渡しましょう。
契約や解約については、施術・契約の内容によって確認事項が変わります。「美容医療ならすべて同じ条件で解約できる」といった一律の案内を避け、自院の書面と適用される制度を専門家等に確認します。
同意書への署名を、説明内容の理解や自由な選択を確認する会話の代わりにしないことも大切です。後で読む資料とその場の説明をそろえ、質問を受け付ける機会を確保します。
7.施術後の相談先を、会計が終わる前に確認する
施術後の案内は、「何かあれば連絡してください」という一言で終わらせず、連絡方法と受付時間を確認します。通常の予約窓口と施術後相談の窓口が異なる場合は、その違いも明示しましょう。
| 確認項目 | 院内で決めておくこと |
|---|---|
| 相談方法 | 電話、フォーム等の利用方法と確認する担当者 |
| 対応時間 | 受付時間、休診日・時間外の案内 |
| 医師への引き継ぎ | 事務担当者が判断せず相談を回す手順 |
| 再診・処置の費用 | 含まれる範囲と、個別確認が必要な条件 |
| 相談記録 | 受けた内容、引き継ぎ先、対応状況を確認する方法 |
症状に応じた受診の目安や緊急時の案内は、医師が施術内容に合わせて用意します。受付担当者が独自に「様子を見てよい」と判断する運用にしないよう、連絡を受けた後の流れも確認しておきます。
8.説明をそろえる仕組みは、資料の管理から始める
説明のずれは、担当者の注意だけでは防ぎきれません。料金や施術メニューが変わったときに、HPだけを更新し、院内資料や会計設定が以前のままになっていないかを確認しましょう。
管理表には、対象メニュー、変更内容、反映する資料、確認者、適用日を記録します。医師による内容確認と、事務担当者による料金・運用の確認を分けると、何が確認済みかを整理できます。
仮の例として、ある施術の料金体系を変更する場合を考えます。新料金の開始日を決めるだけでなく、すでに予約している患者さんへの適用、旧見積書の扱い、HP・予約案内・会計への反映を確認します。例外があれば、担当者の口頭の記憶に頼らず、院内で確認できる形に残します。
全資料を毎回書き直す必要はありません。まずは基本となる料金・条件の一覧を定め、各資料との対応を確認できるようにします。ただし、情報を一つの場所に集約することと、患者さんに必要な情報を適切な場所で示すことは別です。HPの表示は広告規制も踏まえて確認します。[2]
9.今週、一つのメニューで確認したい5項目
最初の点検では、院長と実務担当者で次の五つを確かめてみましょう。
- HPの料金から、来院後の見積額になる条件を説明できる。
- 医学的な質問を医師へ戻す流れが決まっている。
- 確定した見積もりと会計の請求内容を照合できる。
- 検討を持ち帰る患者さんへの案内が用意されている。
- 施術後の相談先と、相談を受けた後の担当が分かる。
食い違いが見つかった項目は、修正する資料と担当者、確認日を決めます。問い合わせや相談があった際も、個人の応対だけを見直すのではなく、どの案内で認識が分かれたかを振り返ることが、次の改善につながります。
HP運用・院内業務整理のご相談
Alplanへのご相談は、下記フォームからお問い合わせください。HPの案内と院内資料の整理、更新担当者の役割分担など、現在の課題をご記入いただけます。医学的な説明内容は医師、広告・契約に関する個別判断は関係機関や専門家への確認が必要です。
代表・幸城裕樹の登壇動画(YouTube/メディカルトリビューン)
参考資料
[1] 厚生労働省「その美容医療、ちょっと待って!」。サイトに2026年3月12日動画追加と記載。サイト全体の初回公表日は今回の確認範囲では未確認。
https://aesthetic-medicine-caution.mhlw.go.jp/
[2] 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」、2026年3月改訂。自由診療の情報提供等を参照。
https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
[3] 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」、2025年8月15日。無資格のカウンセラー等による医学的判断に関する部分を参照。
https://aesthetic-medicine-caution.mhlw.go.jp/pdf/20250815_medical-beauty-guide.pdf
以上、2026年10月27日原文確認。
