「開業時に契約したまま、内容を見直していない」
「請求書は届くけれど、誰が何に使っているか分からない」
そんな支出はありませんか。
クリニックの経費を見直すとき、最初に考えたいのは「何を削るか」ではありません。「何のために払っているか」を説明できる状態にすることです。
仮に月額1万円の契約なら、年間の支払額は12万円。これは単純な計算例であり、そのまま削減できるという意味ではありません。解約費用や切替費用、業務への影響まで確認して初めて、見直す価値を判断できます。
今回は、診療の質とスタッフの働きやすさを守りながら、固定費を点検する7つのポイントを紹介します。
まずは「毎月払っているもの」を一覧にする
予約システム、通信回線、複合機、ホームページ管理、各種ソフト、外部への業務委託など、継続的な支払いを洗い出しましょう。
請求書だけでは内容が分からない場合は、契約書や申込書、担当者への確認も必要です。最低限、次の項目をそろえます。
- 契約先とサービス名
- 月額または年額の支払額
- 含まれる機能とサポート範囲
- 院内の利用担当者
- 直近の利用状況
- 更新日、解約の申出期限、解約条件
- 止めた場合に影響する業務
年払いの契約も、月ごとの支払いとは別に拾っておきます。「利用が少ない」と「不要」は同じではありません。緊急時の対応や安全確保のために、普段は使わなくても必要な契約もあります。
1.誰も使っていない機能に、払い続けていないか
まず確認したいのは、利用者がいなくなったアカウントや、試験導入後に使わなくなったオプションです。
「最後にいつ、誰が、何のために使ったか」を担当者に聞いてみましょう。利用履歴を確認できるサービスなら、実際の使用状況も照らし合わせます。
ただし、院長が使っていないからといって不要とは限りません。受付や事務スタッフが毎日使っている可能性もあるため、現場への確認を先に行います。
2.似た役割の契約が重なっていないか
連絡ツール、ファイル共有、予約管理など、複数のサービスに似た機能が含まれていることがあります。
確認するのは、機能の名前だけでなく「実際にどの業務で使っているか」です。同じように見えても、連携先や操作権限、障害時の役割が異なる場合があります。
統合を検討するときは、必要な機能を残せるか、データを移せるか、業務が止まらないかまで確認しましょう。重複して見えることだけを理由に、すぐ解約する必要はありません。
3.「管理費」に何が含まれるか説明できるか
ホームページ管理費やシステム保守費などは、名称だけでは提供範囲が分かりにくいことがあります。
- 文章や画像の修正は月何回までか
- 障害時はどこまで対応するか
- バックアップや復旧支援は含まれるか
- 追加料金が発生する作業は何か
このように、契約内容を具体的な作業に置き換えて確認します。
支払額が高いか安いかを比べる前に、「その金額で何を任せられるか」をそろえることが大切です。必要な支援が含まれているなら、安いプランへの変更が適切とは限りません。
4.現在の規模に、プランが合っているか
開業時に選んだプランが、現在のスタッフ数や利用量に合っているかを確認します。
アカウント数、通信量、保存容量などについて、実績と契約条件を比較しましょう。平均値だけでなく、繁忙期やピーク時の利用量も見る必要があります。
小さいプランに変えた結果、追加料金が増えたり、必要なときに使えなくなったりすれば逆効果です。「最安のプラン」ではなく、「必要な業務を無理なく続けられるプラン」を選びます。
5.更新日と、解約の申出期限を把握しているか
見直そうと思った時点では、すでに次の更新に向けた申出期限を過ぎていることもあります。
契約ごとに、更新日、申出期限、最低利用期間、途中解約時の費用を確認しましょう。条件は契約によって異なるため、「いつでも無料で解約できる」とは考えないことが重要です。
期限が分かったら、比較や院内確認に必要な時間を見込んで、見直し日をカレンダーに入れます。不明点は契約先に確認し、回答を記録しておくと判断しやすくなります。
6.切替費用まで含めても、見直す意味があるか
月額料金が下がっても、初期設定、データ移行、機器交換、スタッフ研修に費用や時間がかかる場合があります。
比較する際は、次の費用を同じ期間で並べてみましょう。
- 現在の契約を続ける場合の支払額
- 新しい契約の初期費用と利用料
- 旧契約の解約費用、二重払い期間
- 移行作業や研修に必要な費用と時間
金額だけでなく、患者情報を安全に引き継げるか、過去のデータを参照できるか、切替時に診療へ影響しないかも確認が必要です。
7.浮いた費用の裏で、スタッフの作業が増えないか
外部サービスをやめて院内で対応すると、請求額は減っても、受付や事務の負担が増えることがあります。
「誰が代わりに担当するか」「週にどのくらい時間がかかるか」「ミスや残業につながらないか」を、変更前に確認しましょう。
見直し後も、支払額だけでなく、作業時間、問い合わせ件数、現場の困りごとを点検します。費用の削減が、働きにくさへの置き換えになっていないかを見ることが大切です。
医療の安全を支える費用は、安さだけで判断しない
医療機器の保守、情報セキュリティ、感染対策などは、金額だけで削減を決めるべき領域ではありません。
厚生労働省が公表した医療機器のサイバーセキュリティに関する手引書でも、医療機関と医療機器事業者などが連携して、安全確保に取り組むことが示されています。[1]
契約を変更する場合は、必要な対応と責任分担が維持できるかを、関係する専門家や事業者と確認しましょう。「普段トラブルがない」ことは、対策が不要である根拠にはなりません。
最初は30分、3つの契約から始める
一度にすべて見直そうとせず、まずは継続支払いのある契約を3つ選んでみてください。30分は初回確認の目安です。契約内容が複雑な場合は、確認時間を別に確保します。
□ 何のための支出か説明できる
□ 実際の利用者と利用状況が分かる
□ 更新日と解約条件を確認できる
□ 変更した場合の費用と業務への影響が分かる
□ 安全性やスタッフの負担に問題がないか確認できる
分からない項目があれば、その場で解約を決めず「確認すること」と「確認する担当者」を決めましょう。
まとめ|削る前に、支払いの理由を見える化する
固定費の見直しは、必要なものまで減らす作業ではありません。
- 使っているものは、役割を確かめて残す
- 重複や不明点があるものは、条件を調べる
- 変更するものは、移行費用と現場への影響まで確認する
この順番で整理することで、支出について話し合うための材料がそろいます。
クリニックの経営課題を整理したい方は、Alplanへご相談ください。まずは自院の支払いを一覧にすることから始めてみませんか。
参考資料
[1] 厚生労働省「医療機関における医療機器のサイバーセキュリティ確保のための手引書について」(令和5年3月31日)
厚生労働省の参考資料
確認日:2026年10月14日
※本記事の7項目とチェックリストは、契約・業務の棚卸しに向けた実務上の整理です。公的機関の公式チェックリストではありません。個別の契約判断や削減効果を保証するものではありません。
