情報確認日:2026年10月29日
「日本語での説明が難しい患者さんから予約の電話が来た」「海外の保険で受診できるかと聞かれた」。こうしたとき、担当したスタッフごとに説明が変わっていないでしょうか。
外国人患者への案内では、外国語のページを作ることに加え、自院で何を確認し、誰につなぐかを決めておくことが大切です。HPで案内した内容と、来院時の対応が違えば、患者さんもスタッフも戸惑います。
本記事では、問い合わせから予約、受付、診療、会計までの確認事項を整理します。すべての言語に対応することを目標にするのではなく、現在の体制を正確に伝え、分からないことを確認できる流れを作りましょう。
1.受入体制を考えるきっかけとなる厚労省の調査
厚生労働省は2026年9月8日、令和7年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果を公表しました。全国のすべての病院と一部の診療所を対象に、外国人患者の受入体制整備や医療費不払の発生抑止に向けた政策の基礎資料を得る目的で実施された調査です。[1]
調査対象には病院と診療所が含まれますが、結果をそのまま自院の患者構成や課題に当てはめることはできません。まずは実際に届く問い合わせや、院内で対応に迷った場面を確認しましょう。
また、厚労省は、初めて外国人患者への対応に取り組む医療機関でも使いやすい入門ガイドブックを案内しています。[2] 以下の確認表や案内文の例は、こうした公的情報を参考にしたAlplanの実務提案です。調査で効果が実証された方法や、実在する医院の改善実績ではありません。
2.最初に決めたいのは「対応言語」より具体的な対応範囲
HPに「英語対応」とだけ書かれていても、電話予約、受付、医師の説明、書類作成のどこまで対応できるかは分かりません。対応できるスタッフが勤務している日時や、通訳サービスの利用条件によっても運用は変わります。
院内では、次のような一覧を作ってみましょう。
| 確認する場面 | 明確にしておきたい内容 |
|---|---|
| 問い合わせ | 電話・メール・予約フォームのうち利用できる方法 |
| 予約 | 対応言語、確認する担当者、回答までの流れ |
| 受付 | 用意している問診票、本人情報や支払いに関する確認方法 |
| 診療 | 医師への連絡、通訳の手配、説明の理解を確認する方法 |
| 会計 | 支払方法、概算案内、保険に関する問い合わせ先 |
| 受診後 | 結果説明、再診予約、問い合わせの連絡方法 |
日本語以外で日常会話ができることと、診療上の説明を正確に支援できることは区別します。スタッフの語学力だけに依存せず、医療通訳などを必要とする場面や、その手配先を確認しておくことが大切です。
対応条件が勤務日により異なる場合には、HPにも「事前にお問い合わせください」など、実際の運用に合う条件を記載します。常時対応できるように見える表現を、体制の確認なしに掲載しないようにしましょう。
3.予約前に伝える情報を一つにまとめる
予約前の案内は、患者さんが「どこへ、どう連絡し、何を準備するか」を理解できることを目指します。国籍から使用言語や日本語の理解度を決めつけず、本人が希望する言語や必要な支援を確認します。
HPや予約フォームには、診療科・診療時間・所在地に加え、予約方法、受診前に相談してほしい事項、持参物、支払方法を整理します。受診の可否や緊急性に関する判断は、受付担当者だけで断定せず、医師等へ確認する院内の流れに沿って進めます。
案内文を作るときは、長い説明を一度に翻訳する前に、日本語の原文を短くします。一文に一つの内容を書き、日時や連絡先、条件をはっきりさせると、院内でも説明をそろえやすくなります。
例えば、次のような文章を基に、自院で確認した内容を記載します。
「予約の前に、ご希望の言語をお知らせください。診療時に利用できる言語と、通訳の手配について確認してご案内します。通訳の予約や費用が必要な場合は、事前にお伝えします。」
これは案内の構成例です。通訳の有無や費用負担を推測で記載せず、提供元との契約や医院の方針を確認してから掲載してください。予約フォームで集める情報も必要な範囲に絞り、詳しい症状や患者情報をどの経路で受け取るかを院内で決めます。
4.受付で同じ質問を繰り返さない引き継ぎを作る
予約時に希望言語や通訳の手配を確認していても、受付に情報が渡っていなければ、来院後に最初から確認することになります。患者さんに再度説明してもらう負担が増え、予約内容との食い違いも起こりやすくなります。
予約担当者から受付には、希望言語、確認済みの案内事項、通訳の予定、未確認の点など、必要な情報を引き継ぎます。個人情報を含む記録は、医院が管理する適切な場所に置き、必要な担当者が確認できる形にします。
受付では、本人情報や連絡先、利用する保険に関する情報などを、医院の確認手順に沿って扱います。書類の名称や確認方法が分からない場合に、その場の判断で「使える」「使えない」と答えないことが重要です。
問診票の記入が難しい場合も、記入が終わっていないことだけで待たせ続けず、誰に相談するかを決めておきます。患者さんの状態に応じた対応と、事務的な確認の順序は、医師等の判断を踏まえて調整します。
5.翻訳ツールと通訳は、使う場面を分けて考える
院内設備の場所や予約時刻の確認と、症状・薬・検査・治療の説明では、求められる正確性や確認の仕方が異なります。「翻訳アプリがあるので対応できる」と一律に考えず、重要な説明をどう支援するかを準備します。
医療通訳を利用する場合には、対応言語、利用時間、接続方法、費用、予約の要否を確認します。必要なときに担当者が不在でも、院内の誰かが手配できるよう、手順と連絡先を共有しましょう。
翻訳ツールを利用する場合は、患者情報を入力してよいサービスか、保存や外部提供の条件はどうなっているかを確認します。一般向けのツールに、氏名や診療情報をそのまま入力する運用を、確認なしに始めないようにします。
同伴者が通訳を申し出た場合も、本人の意向やプライバシー、説明内容を踏まえて、医療者が対応方法を検討します。大切な説明を、たまたま同行した人の理解だけに任せる前に、専門的な支援が必要かを確認します。
説明の最後には「分かりましたか」だけで終わらせず、次に行うこと、予約日時、服薬や受診に関する注意などを、患者さんがどう理解しているか確かめる方法を院内で検討します。医療上の説明内容と理解の確認は、担当する医療者が責任を持って行います。
6.会計の説明は、受診前・診療中・支払い時につなげる
料金の説明を会計時だけにまとめると、予定していた支払方法が使えない、保険会社への手続きが必要だった、といった行き違いが起こり得ます。受診前に伝えられる条件と、診療内容が決まってから説明する内容を分けましょう。
| 案内する時点 | 確認して伝える内容 |
|---|---|
| 受診前 | 利用できる支払方法、保険に関する確認先、別途費用の有無 |
| 診療内容が変わるとき | 追加の検査・処置等に伴う費用について、誰が説明するか |
| 会計時 | 請求内容、支払額、領収書等の書類、今後の問い合わせ先 |
日本の公的医療保険と海外旅行保険等では、確認する相手や支払手続きが異なる場合があります。国籍だけで保険の扱いを判断せず、本人の状況、必要な確認資料、医院と保険会社等の取扱いを個別に確認します。
キャッシュレス決済についても、利用できる種類や条件を実態に合わせて記載します。概算を案内する場合には、その金額に何が含まれ、診療内容等によって変わる可能性があるかを説明します。未確認の金額や、保険会社から必ず支払われるという約束はしないようにしましょう。
7.HPと院内の説明を同じ内容に更新する
案内ページを作った後は、受付で使う説明メモ、予約フォーム、自動返信メール、電話の案内にも同じ内容が反映されているか確認します。翻訳されたページだけ古い支払方法や連絡先が残っていないかも点検します。
| 更新する情報 | 一緒に確認する場所 |
|---|---|
| 対応言語・対応日時 | HP、予約フォーム、受付の説明資料 |
| 通訳の利用条件 | 院内手順、予約時の案内、担当者の連絡先 |
| 持参物・支払方法 | 受診案内、自動返信、会計の掲示 |
| 再診・結果説明 | 予約票、受診後の案内、問い合わせ窓口 |
更新の担当者と確認日も記録します。日本語原文を変更したら翻訳も確認する、担当者が変わったら通訳の利用方法を引き継ぐ、といった手順を決めると、作成後の管理につながります。
最初から大規模な多言語サイトを作る必要はありません。まずは問い合わせが多い言語や場面を把握し、一ページの受診案内と院内の確認表を整える方法も考えられます。対応できる範囲を正確に示し、難しい場合の相談先を確認しておくことが、患者さんとスタッフの双方にとって分かりやすい受入体制の土台になります。
クリニックのHP・受付業務の整理に関するご相談
Alplanへのご相談は、下記フォームからお問い合わせください。HPの受診案内や予約から会計までの情報整理など、現在の課題をご記入いただけます。医療通訳の手配条件、保険の取扱い、個別の医療判断等は、それぞれの提供元・専門家・担当医療者との確認が必要です。
代表・幸城裕樹の登壇動画(YouTube/メディカルトリビューン)
参考資料
[1] 厚生労働省「令和7年度 医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」(2026年9月8日公開、2026年10月29日確認)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75735.html
[2] 厚生労働省「訪日外国人患者の受け入れを円滑に行うための入門ガイドブック」案内ページ(2026年10月29日確認)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00007.html
